小児歯科の治療で押さえつけはある?近年の治療の進め方を詳しく解説
お子さんの歯の治療において、治療進行のために無理な押さえつけがあるのではないかと不安を抱く方もいるのではないでしょうか。
この記事では、小児歯科で押さえつけによる治療があるのかどうかについて解説していきます。
加えて、お子さんの治療が難しい場合の対処法や、子どもが歯医者を怖がる原因、歯医者を怖い場所だと思わせないためのポイントについても解説します。
お子さんに歯の健康習慣を身に付けてもらいたいとお考えの方は、ぜひご一読ください。
押さえつけによる治療は無くなりつつある
近年の小児歯科での治療において、子どもを押さえつけて無理に治療を進めることは無くなりつつあります。
たしかに、一昔前までは押さえつけながらの治療を行う歯科医院もあったため、以前の歯科医院へのイメージが先行して、「小児歯科では押さえつけがあるのでは?」と不安を抱く親御さんもいます。
しかし、押さえつけながら治療をしても、口の中は自由に動かせてしまいます。
結果、精密な治療が行えない、治療器具などで口の中を傷付けてしまうといったトラブルが起こる可能性があるため、押さえつけながらの治療が無くなりつつあるのです。
小児歯科における治療目的の変化も押さえつけ是正の後押しに
近年の小児歯科における治療方針の変化も理由として挙げられます。
以前は、虫歯等になった乳歯の治療が方針の中心でしたが、現在では生涯にわたる健全な口腔環境の構築と、これを通じた健全な歯の育成が治療方針になっています。
虫歯になった乳歯を治すために、無理に押さえつけて治療をした結果、歯医者嫌いになってしまうお子さんは非常に多いです。
そして歯医者そのものが怖くなり、大人になった後、治療が必要であるにもかかわらず歯医者へ行かず、口内トラブルを放置してしまう、といった悪循環に陥ってしまうのです。
幼少期に限らず、生涯にわたる歯の健康を考えた場合、押さえつけによる治療が将来的にマイナスの影響を与える可能性があることも、押さえつけ治療が是正される理由に挙げられます。
近年の治療は慣れてもらうことから始めていく
前述の理由から、近年の小児歯科での治療は、子どもが歯医者に慣れるためのトレーニングから始めていくことが一般的になっています。
トレーニングの内容は、歯科医院の方針、お子さんの慣れ具合、年齢などによって違いがあるものの、以下のような取り組みが行われています。
- 医師・スタッフと一緒に歯磨きの練習をする
- 治療器具に触れてもらう
- 治療器具の使い方や使用目的などの説明を聞いてもらう
- 水の出ない治療器具で歯のクリーニングをしてみる
- 水や空気の出る治療器具で歯のクリーニングをしてみる
上記を例に、お子さんの慣れ具合を確認しながらステップアップ方式でトレーニングを行い、苦手意識を持つことなく歯科治療を進めています。
治療中の保護者付き添いも今では一般的
お子さんが歯の治療に慣れてもらうために、治療中の保護者付き添いも一般的となりました。
治療中のお子さんを励ます、手を握ってあげるなど、保護者の協力が加わることで、お子さんの治療に対する姿勢も前向きなものになります。
お子さんが診察台に座ることを怖がる場合には、保護者の膝の上に座ってもらい診察を行う歯科医院もあり、治療に慣れるためのトレーニングには保護者の協力が欠かせません。
治療が難しい場合の対処法
トレーニングを通じて治療に慣れていこうとしても、怖さを克服するのに時間が掛かってしまうお子さんもいます。
ここでは、治療が難しい場合に実践されている対処法について解説します。
虫歯の進行止め
治療が難しい場合の対処法として、虫歯の進行止めを使用する場合があります。
虫歯の進行を止めておきながら、並行してトレーニングを行い、治療が可能となるまでお子さんの成長を見守ります。
進行止めで用いられるフッ化ジアンミン銀は、虫歯になった歯質と反応して固まる効果がありますが、一方で反応部分が黒く変色するデメリットがあります。
そのため、永久歯に使用することはなく、乳歯に限定した処置となっています。
麻酔使用
治療中のお子さんを落ち着かせるための方法として、麻酔を用意している歯科医院もあります。
小児歯科で用いられる麻酔の種類としては笑気麻酔がメジャーであり、ガスになった麻酔を鼻から吸い込んでもらい、気持ちの落ち着きを促す麻酔です。
笑気麻酔を用いることで、歯を削る音や振動、治療への不安や恐怖が気にならなくなり、リラックスした状態で治療に臨めるようになります。
笑気麻酔の主成分は亜酸化窒素(N2O)であり、これには軽度の鎮静・睡眠作用と鎮痛作用がありますが、安全性に優れ、鼻から吸い込むことで効果がすぐに現れて、治療後は速やかに排泄されます。
笑気麻酔はリラックス状態が促されますが、お子さんの意識が無くなることはなく、呼び掛けにも反応できるため、お子さんの反応を見ながら治療を進められます。
小児歯科専門医でのトレーニング
トレーニングを繰り返しても治療が難しい、お子さんが痛みを感じており早急な治療が必要という場合、小児歯科専門医を紹介することもあります。
小児歯科専門医は、他の医院での治療が上手くいかなかった小児患者や、発達障害のある患者さんが集まって治療が行われています。
小児への歯の治療に対する理解や実績を蓄積している点で優れているものの、全体の歯科医の総数に対して、小児歯科専門医は数が多くありません。
そのため、小児歯科専門医が在籍する歯科医へ通うために時間やお金が掛かる、予約が取りにくいなど、通い続けるのが難しい場合が大半です。
上記の理由から、小児歯科専門医の下でのトレーニングを通じて、最終的にはかかりつけ医で治療を行えるように移行していく方法が取られることが多くなっています。
子どもが歯医者を怖がる原因
ここでは、子どもが歯医者を怖がる原因について解説します。
歯科医院特有の雰囲気に緊張するから
歯科医院を初めて訪れるお子さんにとって、歯を削る音や消毒薬などの薬品のにおいは緊張を感じる原因となります。
「歯を削った時に怖さを感じた」、「怖い思いをした時に薬品のにおいがした」など、音やにおいは記憶と結びつきやすいです。
これらを和らげるには、治療中の痛みを軽減するなどの歯科医の努力はもちろん、保護者の同伴や治療中の励ましの声掛けなどが重要となります。
未経験のことに緊張するから
歯科医院が初めてのお子さんにとって、歯科医院や歯科医、スタッフなど知らない場所、知らない人であふれた環境下は緊張の原因になるでしょう。
お子さんが小さいほど、保護者以外の大人と会う機会は少なく、初めての歯科医やスタッフに抵抗を感じるのは自然のことといえます。
歯科医やスタッフの優しい声掛けをはじめとして、少しずつ信頼関係の構築を進めることが重要となります。
日常生活で歯医者に対するマイナスイメージを抱いているから
日常生活の中で、親御さんがお子さんに対して「歯医者=怖い場所」と思うような表現をしているケースは多いです。
「きちんと歯磨きしないと虫歯になった時、歯医者さんで痛い痛いされちゃうよ」などが一例です。
親御さんの気持ちは理解できますが、歯医者に対して恐怖を抱いてしまうような表現を控えることも大切な取り組みとなります。
子どもを歯医者嫌いにしないためのポイント
最後に、子どもを歯医者嫌いにしないためのポイントについて解説します。
歯医者に対するプラスイメージを持ってもらう
親御さんが歯医者で治療や定期検診を受けた際には、お子さんに「歯をきれいにしてもらった」などの表現で伝えるようにしましょう。
親御さんから伝えられることで、お子さんも歯医者が良いところであるとプラスのイメージを抱きやすくなります。
親御さんの受診にお子さんを付き添わせ、歯科医院や医師、スタッフに慣れてもらうようにするのも効果的です。
歯医者に行く前にリラックスするための時間を作る
歯医者へ行く際には、お子さんにあらかじめその旨を伝えておき、お子さん自身で心構えができるような時間を作ってあげるようにしましょう。
お子さんの緊張がすぐに解けないことも考慮して、普段から使っているおもちゃや絵本などを持参するのもおすすめです。
決して、歯医者へ行くのではないと嘘をついて連れ出すことはしないようにしましょう。
治療中・治療後に子どもを褒めてあげる
治療を頑張っているお子さんを褒めてあげましょう。親御さんから褒めてもらえることで、治療に対して前向きな気持ちを持ちやすくなります。
お子さんを気遣って「痛くない?」と聞きたくなってしまうかも知れませんが、「この先に痛いことがあるのでは?」とお子さんが身構えてしまう原因にもなるため、声掛けには注意が必要です。
そして、治療が終わった後は、頑張ったお子さんを労ってあげるようにしましょう。
上手くできなかったことがあった場合、注意をするのではなく「今度はできるようになろう!」と次の目標立てに役立ててみてください。
また、上手にできたことがあった場合には、たくさん褒めてあげてお子さんのモチベーションを高めてあげるようにしましょう。
まとめ
この記事では、小児歯科で押さえつけによる治療があるのかどうかについて解説してきました。
歯医者を怖い場所だと思わず、大人になってからもきちんと歯医者へと通ってもらうという背景から押さえつけは是正されるようになりました。
そして現在では、お子さんとの信頼関係構築を通じた、歯医者に慣れるためのトレーニングから始めることが一般的となりました。
「千歳烏山やの歯科」には、キッズルームを整備しています。お子さんにとって安心を感じてもらえるように、さまざまな絵本やおもちゃを取り揃えています。
医師やスタッフひとり一人も、お子さんに心を開いてもらえるように、丁寧なコミュニケーションを心掛けており、安心して治療を受けてもらえる万全のサポートを行っています。
お子さんの歯の治療を検討の際には、ぜひ当院へカウンセリングへいらしてください。