小児歯科でフッ素を塗布する理由とは?効果や治療の開始時期を詳しく解説

小児歯科 フッ素

小児歯科において、フッ素塗布は虫歯予防のために有効な治療だとされています。

しかし、フッ素はどのような働きによって虫歯を予防できるのか、危険性はないのかなどと疑問がある方もいます。

この記事では、小児歯科でのフッ素塗布について、その重要性やフッ素が持つ効果、具体的な治療方法について解説します。

自宅でのフッ素ケアについても触れていますので、まずは自宅ケアから取り組んでみようとお考えの方も、ぜひご一読ください。

乳歯は虫歯になりやすいから保護が大切!

小児歯科 フッ素

まずはじめに、フッ素塗布をはじめ、乳歯を小児歯科や自宅での歯磨きなどできちんと保護することの重要性について解説します。

歯は硬くなるほど虫歯菌からの防御に強くなる

歯はエナメル質、象牙質、歯髄といった組織から構成されています。

一番外側に位置するエナメル質は人の身体を構成する物質の中で最も硬く、骨以上の硬度を誇ります。

歯が硬い、これを言い換えると、エナメル質がきちんと構成されていることを意味しています。そして、虫歯菌などからの侵食をしっかりと防げる状態にあるといえます。

しかし、丈夫さを誇るエナメル質であっても、歯垢や歯石の中に潜む、ミュータンス菌をはじめとした虫歯菌が発生させる酸には注意が必要です。

酸には歯表面のエナメル質を溶かす性質があります。

通常であればエナメル質が溶けても、再石灰化によって徐々に元に戻るため虫歯を防げますが、傷つきすぎたエナメル質は元に戻らず、虫歯になってしまいます。

口内が酸に晒される機会が多い生活習慣を過ごすと、丈夫なエナメル質もあっという間に脆くなってしまうということです。

乳歯はやわらかい分、虫歯リスクも高い!

虫歯予防においては歯の硬さ(エナメル質)が重要であることが分かったことでしょう。

これを踏まえたうえで乳歯に注目すると、乳歯は永久歯と比較して非常にやわらかく、虫歯になってしまった場合、その侵食スピードは永久歯と比べて速いという特徴があります。

乳歯のやわらかさは、エナメル質などの歯の構成物質がカルシウムを取り入れる機会が少ないことが影響しています。

カルシウムを取り入れるタイミングは、歯が顎の中に埋まっている時に血液中から取り入れる段階と、歯が露出した後に唾液中から取り入れる段階の2つが挙げられます。

しかしながら、乳歯は前者の段階しか経ることがなく、歯の丈夫さを保ちにくいのです。

虫歯の多い子供時代を過ごすと永久歯の虫歯リスクも高くなる!

乳歯は永久歯へ生え変わるものですが、だからといって乳歯が虫歯になってもいいというわけではありません。

すべての歯が乳歯から永久歯へと一度に生え変わることはないため、乳歯が虫歯になっている場合、先に生え変わった永久歯が虫歯リスクにさらされることとなるのです。

また、乳歯はやわらかいと説明しましたが、生えたばかりの永久歯も唾液中のカルシウムを取り込む機会が少ないことからやわらかく、虫歯になりやすいといわれています。

フッ素が持つ3つの虫歯予防効果

小児歯科 フッ素

ここでは、虫歯予防に優れるフッ素が持つ3つの効果について解説します。

歯質強化

まず挙げられる効果は、歯の歯質、特にエナメル質を強化することです。

歯科予防のために使われるフッ素は、その酸化力の強さから一般に化合物になっています。

具体的には、カルシウムと結びついたフッ化カルシウムや、ナトリウムと結びついたフッ化ナトリウムといった状態で歯の表面に塗布されます。

エナメル質は上記のミネラル分を主成分としているため、フッ素塗布を行うことで、歯質の密度が高まります。

そして、虫歯菌が出す酸にも負けない歯へと強化できるのです。

再石灰化の促進で初期虫歯を修復

歯のエナメル質は一度作られたからといって、同じ状態を保持するわけではありません。

食事などによって口の中が酸性に傾くと、歯の表面組織からカルシウムなどのミネラル分が溶出し、エナメル質は一時的に脆い状態になります。

この現象は脱灰(だっかい)と呼ばれます。

脱灰は食後常に起こっていますが、口の中では同時に、唾液中のミネラル分を取り込むことで再度エナメル質を構成する現象も起こっています。

これは再石灰化(さいせっかいか)と呼ばれ、フッ素には再石灰化を促進する効果があります。

初期の虫歯は再石灰化の過程で自然治癒できることも明らかとなっており、フッ素塗布によって初期虫歯の修復効果が期待できるということです。

虫歯の原因菌の活動をブロック

虫歯の原因菌が潜む歯垢や歯石を口の中に放置してしまうと、菌は増殖を続け、エナメル質を溶かす酸をどんどんと産出してしまいます。

酸によってエナメル質が脆くなると、虫歯になるスピードも加速度的に早くなります。

フッ素には虫歯菌の活動を抑制する効果があります。

日々の食後の歯磨きで歯垢を落とすことが望ましいですが、フッ素を活用することで、万が一磨き残し等があったとしても脱灰のリスクを低減できます。

小児歯科でのフッ素塗布について

小児歯科 フッ素

ここでは、小児歯科でのフッ素塗布治療について詳しく解説します。

フッ素塗布を受けられる適齢期は?

フッ素は歯に塗布することで効果を発揮するため、最も早い時期は乳歯が生え始めたタイミングです。

しかし、1歳未満のお子さんは歯の本数も少なく、比較的虫歯のリスクは低いため0歳のうちに無理にフッ素塗布を行わなくても大丈夫です。

上下左右の前歯が8本生え揃う頃になると、お子さんが歯磨きを嫌がる・甘いお菓子を食べるようになるといったように虫歯リスクが高まります。

虫歯リスクを低減するためには、前歯が生え揃う1歳頃を目安にフッ素塗布を検討すると良いでしょう。

小児歯科でのフッ素塗布の方法

小児歯科の治療では、フッ素を含ませた脱脂綿などで、歯の1本1本、頬側、噛み合わせ部分、舌側すべての部分に丁寧な塗布が行われます。

歯科医院のフッ素塗布で用いるフッ化物は、市販の歯磨きなどの家庭用のものより高濃度です。

具体的には、厚生労働省よりフッ化物の含有基準値が1,500ppmのものまで用いることが可能と示されています。

フッ素塗布の費用について

歯の表面のエナメル質に初期の虫歯が確認された場合、フッ素塗布を保険適用で受けることができます。

しかし、上記の条件を踏まえ、保険適用の範囲でフッ素塗布を継続しようとした場合、適用頻度は3ヵ月に1度までとなっています。

加えて、保険適用のために、歯のレントゲン撮影画像などの経過観察記録を保管しておく必要があります。

虫歯が確認されない健康な歯の場合は保険適用外となるケースが多いですが、市町村の医療補助などを受けられる場合もあります。治療を受けるにあたって確認してみると良いでしょう。

フッ素塗布の効果を最大限発揮するために

フッ素は一度塗布をしたからといって効果が永続するものではありません。

一般に、歯質に取り込まれた成分の効果は3ヵ月~4か月持続すると考えられています。

季節の変わり目などを目安に、小児歯科でフッ素塗布を行うことで、お子さんの虫歯リスクを抑えることができるでしょう。

また、小児歯科での治療に加えて、後述するご家庭でのフッ素活用によってお子さんの歯はさらに丈夫になります。

歯科医院と自宅ケアの両面からサポートしてあげましょう。

フッ素にデメリットや危険性はある?

フッ素は大量に摂取するとフッ素中毒を起こすことがありますが、歯科医院で扱われるフッ素は安全で取り扱いも十分に注意して塗布を行います。

大量に『飲みこむ』という行為をしてしまった場合は中毒が心配されますが、『塗布』であれば中毒の心配はありません。

ただし、ご自宅でフッ素配合の歯磨き粉などを保管する際は、取り扱いに十分注意するようにしましょう。

自宅での歯磨きにもフッ素を取り入れましょう!

小児歯科 フッ素

ここでは、自宅ケアでフッ素を活用する方法について解説します。

フッ素が含有されたオーラルケアアイテムは主に、歯磨き粉、洗口液、ジェルがあります。

それぞれのアイテムを使用する際のポイントや注意点を以下にまとめました。

歯磨き粉

お子さんが歯磨きをするようになった際には、フッ素入りの歯磨き粉を使用してみると良いでしょう。

歯磨きをする度にフッ素を補給できるため、手軽にフッ素ケアを行える利点があります。

注意点として、フッ素入り歯磨き粉の成分表示を見て、フッ素の含有濃度を確認するようにしましょう。

各年齢期に応じたフッ素入り歯磨き粉の適用量とフッ素濃度は以下の通りです。

年齢歯磨き粉のフッ素濃度使用量
歯の生え始め時期~2歳500ppm爪先くらいのごく少量
3歳~5歳500ppm5mm以下
6歳~14歳1,000ppm1cm程度
15歳以上1,000ppm~1,500ppm1cm~2cm程度

洗口液

洗口液を使うことで、歯ブラシでは磨きにくい奥歯や、歯と歯の隙間にも薬用成分を届けられます。

日々の歯磨きと定期的な洗口液でのブクブクうがいを習慣化させると、お子さんの虫歯リスクはさらに低減できるでしょう。

注意点として、お子さんが洗口液を誤飲する可能性があるため、ブクブクうがいを上手にできるようになってから使用するようにしましょう。

ジェル

ジェルはフッ化物とキシリトールを主成分とした、家庭用のフッ素塗布アイテムです。

歯磨き粉と異なり、研磨剤や発泡剤が含まれておらず、歯に塗布しやすいように粘り気があります。

歯磨きを終えた後の清潔な歯にフッ素入りジェルを塗布することで、再石灰化を促進しやすくおすすめです。

使用方法として、ジェルを塗布した後は水でゆすがず、つばと一緒に吐き出すこと、塗布後30分は飲食を控えることに注意が必要です。

まとめ

この記事では、小児歯科でのフッ素塗布について、フッ素ケアが重要な理由やフッ素が持つ3つの虫歯予防効果、具体的な治療方法について解説しました。

お子さんが小さいうちから歯を健康に保つことで、永久歯へと生え変わった後も健康な口腔環境を持続できるようになります。

乳歯の虫歯リスクを低減するためにも、小児歯科でのフッ素塗布や、自宅でのフッ素ケアを実践してみていただければ幸いです。

千歳烏山やの歯科」が併設する小児歯科では、今回の記事で取り上げたフッ素塗布を行っております。

フッ素塗布による虫歯予防だけでなく、お子さんの歯を大人になってからも健康に保つために、自宅で実践できる仕上げ磨きの指導やお子さん向けの歯磨きトレーニングを行っております。

治療や歯磨き指導では、お子さんに心を開いてもらえるように、丁寧なコミュニケーションを心掛けています。安心して治療を受けてもらえるように、キッズルームの完備など、万全のサポートを行っています。

お子さんの歯の治療を検討の際には、ぜひ当院へカウンセリングへいらしてください。

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