小児矯正で顎を広げる目的は?メリットやデメリット・治療の流れを解説
顎が細い場合、将来的に正しい歯並びをキープするためにも顎を広げる装置を用いた小児矯正を推奨します。
成長段階の顎を広げることで、歯が生える土台を整え、将来的な歯並びの改善、虫歯や歯周病などのリスクを軽減可能です。
顎の成長が不十分で細い場合、歯が正しいスペースに生えるスペースがなくなり、歯並びが悪くなる原因となります。
歯の土台が柔軟な子どもには、顎を広げる装置を用いた小児矯正が効果的です。この記事では、顎を広げる治療の目的、メリットやデメリット、治療の流れを解説します。
小児矯正で顎を広げる目的や方法
小児矯正では顎を広げる治療が行われる場合があります。顎顔面矯正とも呼ばれ、小児矯正のなかでも一般的な治療方法です。
生まれつき顎が細い場合や食生活が影響して顎の発達が不足している場合、歯が正しくスペースがなくなり将来的に歯並びが乱れてしまいます。
特殊な装置を使って顎を広げ、歯の生えるスペースを確保して将来的に正しい歯並びを誘導していきます。小児矯正で顎を広げるために使用される主な装置は以下の通りです。
使用する装置名 | 主な用途 |
急速拡大装置 | 上顎の横幅を広げるための矯正装置 |
リンガルアーチ | 下顎の横幅を広げるための矯正装置 |
アクチバトール(FKO) | 取り外し可能な矯正装置で主に上顎前突の治療に用いられる |
顎顔面矯正では、まず急速拡大装置という固定式の装置を使い、上顎の骨の横幅を広げて歯列全体の横幅を広げていきます。
2週間~2ヶ月ほど装着して顎の骨の形を整え、永久歯が生えるスペースを確保させるのが目的です。
ただし、急速拡大装置は上顎にしか使用できない装置となるため、下顎の調整を終えたあとはリンガルアーチという固定式の装置を装着して下顎の横幅を広げていきます。
上顎とした顎の成長の誘導が終えたら、取り外しが可能なアクチバトール(FKO)を装着します。
アクチバトール(FKO)は、主に上顎前突の治療に用いられる装置となっており、下顎を正しい位置へ誘導するのが役割です。
つまり、小児矯正で顎を広げる目的は歯そのものを動かすのではなく、将来的に正しい歯が生えるような土台作りにアプローチする治療方法となります。
永久歯が生え揃った時期ではなく、幼児期~小児期にかけて永久歯が生える前の段階で行われることが一般的です。
小児矯正で顎を広げるメリット
小児矯正で顎を広げるメリットは以下の通りです。
- 歯並びの土台ができて第2期の治療がスムーズになる
- 口呼吸を防ぐ
- 咀嚼力を強くする
- 顔全体のバランスが整う
- 装着する装置が目立ちにくい
ここでは、小児矯正で顎を広げるメリットを解説します。
歯並びの土台ができて第2期の治療がスムーズになる
顎を広げる小児矯正の主な目的は、歯並びの土台作りです。
顎の骨格がやわらかい小児期のうちに本来あるべき歯並びのスペースを確保しておくことで、永久歯が正しく生える環境を整えます。
子どものうちに歯並びの土台を整えておかないと、将来的に反対咬合(上下の嚙み合わせがずれる)や埋伏歯(永久歯が歯茎に埋もれる)などのリスクが高くなります。
また、永久歯が生え揃ってから第2期の治療が必要になった場合でも、歯並びの土台ができていれば治療がスムーズに進みます。
抜歯による矯正治療のリスクも抑えられるため、歯を1本でも多く残すためにも、顎を広げる治療は大切です。
口呼吸を防ぐ
顎の骨を広げると鼻腔も同時に広がり、鼻呼吸がしやすくなります。口呼吸は、細菌から身を守るうえでも避けるべき呼吸方法です。
人は鼻のフィルターを通して有害な細菌をシャットアウトし、病気のリスクを下げています。
口呼吸が慢性化すると鼻のフィルター機能が働かず、外部の細菌をダイレクトに体内に取り込んでしまい、病気や虫歯などのリスクを高めてしまうでしょう。
また、鼻呼吸は口臭予防にも効果的です。
口腔内の食べかすや歯垢や歯石は口臭の原因となりますが、口呼吸の場合、細菌がさらに繁殖しやすい環境となってしまい口臭が悪化してしまいます。
そのため、顎を広げて口呼吸を防ぐことは将来正しい歯並びを誘導させるだけでなく、体を健康に保つためにも大切な治療です。
咀嚼力を強くする
小児矯正で顎を広げることには、咀嚼力を強くするメリットも挙げられます。
顎を広げる治療の大きな目的は将来の生える永久歯の土台作りですが、同時に噛み合わせの改善も期待できます。
顎が狭い場合は上下の噛み合わせがずれてしまいますが、顎を広げることによって正しいかみ合わせへ誘導が可能です。
咀嚼力は、消化器官への負担を防ぐためにも重要な役割を担っています。食べ物をよく噛むことで消化管への負担が抑えられ、将来的な病気のリスクも軽減できるでしょう。
また、十分な咀嚼は肥満予防にも効果的です。食べ物をよく噛まずに飲み込むと満福中枢が刺激されず、早食いや大食いのクセがついてしまいます。
特に小学生から思春期にかけての早食いや大食いは、肥満や生活習慣病につながりやすいため、顎を広げて小児矯正によって原因を取り除くことも大切です。
顔全体のバランスが整う
矯正装置の装着で顎を広げると、歯並びだけでなく顔全体のバランスが整います。
永久歯が正しく生える土台が形成されることで、上顎前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)のリスクを軽減できるだけでなく、左右のバランスの取れた顔立ちへと変化します。
小児矯正には本来審美的な目的はありませんが、もともと歯並びがコンプレックスだった子どもにとっては、見た目を改善させるチャンスです。
子どもが見た目のせいで悩んでいたり、コンプレックスを抱えて消極的になっている場合は、歯列矯正をさりげなく勧めてみるのもおすすめです。
装着する装置が目立ちにくい
小児矯正で顎を広げるためには、急速拡大装置・リンガルアーチ・アクチバトール(FKO)などの装置が用いられますが、いずれも目立ちにくいメリットがあります。
ワイヤー矯正のように歯の表面ではなく歯の内側に装置を装着するため、口を大きく開けない限り目立つことはなく、見た目を気にせず治療を進められます。
小児矯正で顎を広げるデメリット
小児矯正で顎を広げる治療は将来の正しい歯並びを誘導させるためにも大切ですが、一方でデメリットもあります。
小児矯正で顎を広げる場合の主なデメリットは以下の通りです。
- 矯正装置による痛みや違和感
- 虫歯や歯周病リスクの一時的な上昇
ここでは、顎を広げる治療で考えられるデメリットを解説します。
矯正装置による痛みや違和感
顎を広げる小児矯正では特殊な装置の装着が必要です。
しかし、矯正装置が子どもの歯や顎に合わない場合、痛みや違和感が生じてしまう可能性があります。
子どもはわずかな痛みや違和感に敏感です。矯正装置による不快感によって食事やコミュニケーションが難しくなり、心身の発達に影響が出てしまうかもしれません。
また、あまりにも強い痛みを感じてしまった場合は、歯科医へ対するトラウマを植え付けられてしまう可能性もあるでしょう。
そのため、顎を広げるための矯正装置で痛みや違和感を感じたら、早い段階での対処が必要です。歯科医師と相談しながら、矯正装置の変更も視野に入れておくとよいでしょう。
虫歯や歯周病リスクの一時的な上昇
歯列矯正は正しい歯並びを誘導する治療となるため、本来は歯並びのすき間がなくなり、虫歯や歯周病のリスクが低下します。
しかし、顎を広げるために、矯正装置を口腔内に装着するため、歯磨きがしにくくなり、虫歯や歯周病リスクが高くなるケースも少なくありません。
また、矯正装置についた汚れも原因のひとつです。顎を広げるために装着する矯正装置は固定式が基本となるため、治療中は普段よりも徹底した口腔ケアが必要になります。
もし矯正治療中に虫歯や歯周病が見つかった場合は、直ちに歯科医へ報告して今後の治療方針について相談してください。
顎を広げる顎顔面矯正治療の基本的な流れ
ここでは、顎を広げる顎顔面矯正治療の基本的な流れについて解説します。
カウンセリングと診察
歯科医師が小児矯正を検討した理由や気になる点、希望の治療方法などをカウセリングでおうかがいします。
また、カウンセリングと同時に歯や歯並びの状態を検査します。
診察とカウンセリングによって今後の治療方針が決まるため、治療に関する不安は事前に確認しておきましょう。
検査
口腔内の状態をより詳しく調べるために、顔や口腔内の写真撮影、歯の模型取り、頭蓋骨や歯のレントゲン、顎関節などの状態を検査します。
顎のレントゲンを撮影し、骨格レベルでの特徴や問題点を把握します。
治療方針の説明
撮影したレントゲン写真や模型を用いながら、検査結果に基づいた治療方針を説明します。治療期間や治療費用など、分からないことがあれば確認しておきましょう。
治療と定期的な調整
治療方針に沿って治療が行われます。顎顔面矯正治療では装置の装着後、月に1回程度のペースで経過観察が必要です。
経過観察では、痛みや違和感、虫歯がないかなどを確認しながら矯正装置を調整します。
治療後のアフターフォロー
顎顔面矯正治療によって顎が広がれば矯正装置が外されます。
ただし、治療終了後は歯が元の位置に戻る後戻りが懸念されてしまうため、リテーナーと呼ばれる保定装置を装着して後戻りを防止します。
まとめ
小児矯正には、顎を広げる顎顔面矯正治療と呼ばれる治療方法があります。
顎顔面矯正治療は、歯を動かすのではなく、発育段階の顎骨を広げ、永久歯が正しく生えそろう土台を整える治療方法です。
顎を広げることで将来的な歯並びの改善だけでなく、口呼吸を防いだり、顔全体のバランスを整えるようなメリットがあります。
また、将来的に第2期の治療が必要な場合でも、抜歯のリスクを減らしてスムーズに治療を受けられるようになるでしょう。
さらに、顎顔面矯正治療で装着する装置は歯の内側に装着するため、治療中の見た目を心配する必要がないのもメリットのひとつです。
千歳烏山やの歯科では、顎顔面矯正だけでなく、ワイヤー矯正やマウスピース矯正など、幅広いタイプの小児矯正を提供しています。
事前のカウンセリングや検査結果にもとづいて、お子さまに合った負担の少ない治療方法をご提案いたします。
矯正専門医が小児矯正に関する相談を無料でお受けしているため、顎を広げる小児矯正について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。