親知らずは抜くべきか抜かないべきか?治療のメリットやリスクを詳しく解説
生え方が特殊な親知らずは、放置していると虫歯や歯周病、歯ぐきの炎症など様々な病気に発展する可能性があります。
親知らずは20歳前後から生えてくることが多いですが、特に何もせず放置するという方も多くみられます。
まっすぐ生えた状態の親知らずは、抜かなくていい場合もありますが、横向きや斜め向きに生えた親知らずは、歯科医師による治療の判断が必要です。
本記事では、親知らずの抜くべき、抜かないべき状態についてや、親知らずの治療のメリットやリスクについて詳しく解説します。
親知らずとは
親知らずとは、前歯から数えて8番目の位置にある永久歯で、正式には第三大臼歯といいます。
通常は、永久歯は12歳頃に生えそろいますが、親知らずは20歳前後に遅れて生えることが多いです。
親知らずは、先天的に存在しない場合もあり、全員に生えてくるわけではありません。
他の歯より遅れて生えてくるため、生える場所が十分にないと、歯ぐきに埋まった状態やあらぬ方向に生えてしまう場合があります。
そのような場合、虫歯や歯ぐき周辺の腫れなどの口内トラブルが起こる可能性があります。
親知らずを抜くべきケース
ここでは、親知らずを抜くべきケースを説明します。
親知らずに痛みや腫れがある
親知らずとその周辺に痛みや腫れが合った際は、抜歯をした方が適切です。
親知らずは一番奥の位置にあり、歯磨きによるケアが困難な場合があります。そのため、虫歯や歯周病になりやすく、歯肉炎による痛みや腫れが他の歯よりも起こりやすいです。
痛みや腫れがある親知らずを放っておくと、虫歯や歯周病、歯冠周囲炎などの口内トラブルに発展するおそれがあります。
親知らずが横の歯を圧迫している
親知らずが横の歯を圧迫しているような感覚がある方についても、抜歯を行う必要がある場合があります。
親知らずが横向きや斜めに生えてくることで、隣の歯が押されることによる歯並びへの影響や、汚れがたまりやすくなって隣の歯が虫歯になる可能性があります。
虫歯の痛みが増すだけでなく、歯並びの変化による嚙み合わせが悪くなる影響もあるため、少しでも違和感があった場合は歯科医師に相談することが大切です。
親知らずを抜かなくてもいいケース
下記のような状態の場合、親知らずを抜かなくてもいいケースがほとんどです。
- 基本的に歯がまっすぐ生えている状態
- 親知らずが完全に埋まっている状態
- 親知らずが一部だけ出ていて、痛みや違和感などの症状がないケース
ただし、現状は問題なくても、のちに口内トラブルが発生する可能性があります。
そのため、親知らずを確認した時点で歯科医師に相談するのが適切です。
親知らずが原因で起こり得る症状や病気
ここでは、親知らずが原因で起こり得る症状や病気について詳しく解説します。
虫歯・歯周病
親知らずは、一番奥の位置にあるため、歯ブラシのケアをしっかり行えないことが多く、虫歯や歯周病に発展する場合があります。
また、親知らずが傾いて半分埋まった状態でも不潔になりやすいです。
親知らずだけの虫歯であれば、抜歯して治療できます。
ただし、隣の歯にも虫歯が浸食するリスクがあるため、早めの治療や丁寧なケアが必要になります。
歯冠周囲炎
歯冠周囲炎は、親知らず周辺の歯ぐきの腫れや痛みの症状があり、悪化すると顔や喉、首などにも炎症が広がり命に関わるケースもあります。
親知らずが生える際に、横や斜めに生え歯肉が被さった状態になり、隣の歯との間に深いすき間ができる場合があります。
すき間に汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖しやすい不潔な状態です。
歯冠周囲炎を予防するには、口内をしっかりそうじして清潔に保つ方法が一番です。
親知らずは最も奥に位置するため、通常の歯磨きでは汚れを落とせない場合が多いですが、デンタルフロスやタフトブラシを使用して細かく掃除できるとしっかり汚れを落とせます。
含歯性嚢胞(濾胞性歯嚢胞)
骨に埋まっている親知らずの成分が袋状になる場合があり、含歯性嚢胞(濾胞性嚢胞)といいます。
含歯性嚢胞を放置すると少しずつ大きくなり、顎の骨を溶かすおそれがあるため、摘出の治療が必要です。
無症状のケースが多く、虫歯の治療の際に撮ったレントゲンで偶然に発見されることもあります。
嚢胞が小さいときは無症状であるものの、大きくなると顎の腫れや周囲の歯の位置変化が起こります。
含歯性嚢胞は、初期段階で発見が難しい病気です。そのため、定期的な歯科検診を行い、早期発見につなげることが大切です。
親知らずを抜くメリット4選
ここでは、親知らずを抜く4つのメリットについて詳しく解説します。
虫歯や歯周病を未然に防ぐ
親知らずを抜くと、日々の歯磨きによるケアがしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクの軽減に期待できます。
親知らずが、斜めや横向きに生えていると歯磨きでのケアがしづらく、十分に汚れを落とせない可能性が高いため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
虫歯や歯周病を未然に防ぐためには、日々のケアをしっかり行うことが重要ですが、親知らずはケアをするにあたって弊害となる場合が多いです。
そのため、生えている状態や症状に応じて、抜歯による治療が必要とされます。
気になる口臭を軽減
親知らずを抜くと、奥歯の方までしっかり磨けるようになり、歯肉の炎症も予防できるため、口臭の軽減に期待できます。
親知らず周辺は、しっかりケアができていないと不潔な状態になりやすく、歯ぐきの炎症を引き起こすケースも多いです。
磨き残した汚れや炎症による歯ぐきから出る膿は、口臭の原因となります。
親知らずが生えてから口臭が気になるという方は、抜歯による治療で口内のケアをやりやすくし、清潔にすると悩みを解決できる可能性があります。
歯並びや噛み合わせの悪化を防ぐ
他の歯を押す可能性がある親知らずを抜くと、将来的な歯並びや噛み合わせの悪化を防げます。
まっすぐに生えている親知らずは、特に問題なく成長していきます。
しかし、横向きや斜め向きに生えている場合、他の歯を押してしまい歯並びや噛み合わせが変化してしまう可能性があるため、適切な対処が必要です。
親知らずが生えた段階で歯科医師に相談し、他の歯への影響があるか判断してもらうことが大切です。
肩こりの軽減
親知らずを抜くと、痛みや噛み合わせの悪さによる筋肉の緊張がとれ、肩こりが治る場合があります。
ただし、親知らずが原因で肩こりが起こっているとも限らないので注意が必要です。
親知らずがまっすぐ生えていないと、痛みで顎の動きが鈍くなったり噛み合わせや歯並びのバランスが悪くなったりし、肩や首の筋肉が緊張して肩こりが起こります。
肩こりに悩んでいる方で、親知らずが生えているという方は、抜歯を行うと肩こりを軽減できる可能性があります。
親知らずを抜歯する際のリスク
ここでは、親知らずを抜歯する際のリスクについて詳しく解説します。
抜歯した周辺に痛みや腫れを伴う
親知らずを抜いた場合、抜歯した周辺の歯ぐきに腫れや痛みが発生し、治るまで1〜2週間程度かかる場合があります。
まっすぐ生えておらず、横や斜め向きに生えている親知らずは、抜歯する際に歯ぐきを切る作業や骨を削る作業が発生する場合があります。
腫れのピークは3日後と言われており、徐々に痛みと腫れが治まる傾向です。
唇や舌の感覚が鈍くなる可能性がある
下顎の親知らずを抜歯する際に、近くに通っている下歯槽管神経を傷つけてしまい、唇や舌の感覚が鈍くなる麻痺が残る可能性があります。
ほとんどの場合は一時的な症状で治まりますが、稀に症状が長期間続くケースもあります。
麻痺の症状があった場合は、星状神経節ブロック療法やレーザー治療、薬物療法などの適切な治療が必要です。
万が一抜歯を行なった翌日に麻痺の症状が出た場合は、速やかに治療した歯科や主治医への相談が必要です。
顔に内出血が出る可能性がある
抜歯後は、内出血した血液が皮下組織に溜まり、頬や顎に青あざが出る可能性があります。
青あざは1〜3週間程度で治るため、特に問題はない場合が多いです。
親知らずを抜く治療の流れ
ここでは、親知らずを抜く治療の流れについて詳しく解説します。
初診・カウンセリング
まずは、患者さまのお話を聞き、親知らずによる痛みや腫れなどの症状の確認を行い、治療の計画を一緒に立てていきます。
検査・診断
診察やレントゲン撮影などによる検査で、抜歯の必要性・歯ぐきの炎症・親知らずの位置・神経との距離などに着目して、総合的な判断で治療の計画を立てます。
歯ぐきの炎症がひどい状態だと麻酔が効きにくい可能性があり、親知らずが顎の骨の中にある状態だと施術に時間がかかる場合があります。
このようなケースでは、適切な状態で抜歯を行えるようになるまで待つことが重要です。
麻酔の注射
抜歯を行う前に、痛みや出血を抑えるために麻酔注射を行います。
注射の痛みを軽減するために、施術箇所への麻酔薬の塗布による表面麻酔をした後に注射を打つようにしています。
抜歯
まっすぐ生えている親知らずは、器具を使用して親知らずを抜きます。
横や斜めに生えている場合は、必要に応じてメスで歯ぐきを切り、顎の骨を削ってから親知らずを取り出します。
上顎の親知らずは骨が比較的柔らかく、下顎の親知らずよりも抜きやすいです。下顎の親知らずは骨が頑丈で硬いため抜きにくいと言われています。
抜歯直後はガーゼを噛んで圧迫止血を行い、しばらく院内で様子を見ます。
アフターケア
抜歯の治療後は、定期的にメンテナンスを受け問題がないか確認を行います。
抜歯後は患部周辺の腫れが発生しますが、およそ3日後がピークになることが多く、徐々に治まります。
痛みや腫れが治まらない、口の周辺の感覚が鈍いなどの症状があった場合は、すぐにご相談ください。
まとめ
親知らずは、痛みや腫れなどの症状が伴う抜くべき親知らずと、まっすぐ生えていて抜かないでいいものがあります。
親知らずを抜くと、虫歯や歯周病、歯並びの悪化を防ぎ、口臭や肩こりを軽減するなどのメリットがありますが、抜歯後に痛みや腫れ、唇や舌の麻痺、頬や顎などに内出血が起こるリスクも生じます。
親知らずが生えてきて、どうしたらいいかわからない場合は、歯科医師に相談して抜歯の必要性を判断してもらうことが重要です。
『千歳烏山やの歯科』では、患者さまのお話を聞き、一緒に治療の計画を立てることで安心してご利用いただけます。
「痛くない、怖くない治療」を目指し、適切な親知らずの治療をご提案いたします。
親知らずが生えてきた方や痛みに悩んでいる方は、ぜひお気軽にご相談ください。